2003年 伝承と香と薬のお話し
香と薬が日本史上に登場したのは奈良時代でした。
正倉院の薬種目録が初見のようですが、記載されている薬物の大方は香料でもありました。
さて、私ども春香堂初代、栄次郎が漢方薬問屋に丁稚奉公の後、漢方薬業として独立しています。
たまたま、近隣のご住職方から請われて漢方薬材料を利用したお香の調合を生業としたのが始まりで、現在の薫物香料業に至っています。
香と薬がとても密接な関係にあることをご理解いただけることと思います。
最近、「○○大事典」や、「××リサーチ」など身体の諸処の作用を化学分析や臨床データをもとに検証するテレビ番組がもてはやされています。
これらの内容のほとんどは「昔から△△は□□に効くと云われてきたが本当か?」といった伝承の審議を問うものが多く、分析器機の進歩や臨床データの蓄積によって、
それらの資料や情報が比較的容易になった21世紀の現代だからこその科学情報番組ではないかと思われます。
そういった中、嗅覚の研究も遅蒔きながら進歩し、脳内神経伝達システムといった、香りの身体への影響も科学的に解明されつつあります。
香りの成分の何がどの脳内経路を辿りセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといったような分泌物を出し、心身のリラックスを促したり、リフレッシュやエキサイトといった心身の作用を引き起こすかが解明されてきました。
またこのような香りと身体のシステムが、医学療法にも利用されつつあり、アレルギー性鼻炎や花粉症に留まらず、この嗅覚による心身の作用が、重要な療法のひとつになりつつあるのです。
まさに、現代のストレス社会の救世主にもなりえる医療といわれています。
近い将来、私ども春香堂の漢方生薬を配合した香りも、この科学進歩の恩恵に浴し、伝承されてきた能書と、科学的に解明されつつある成分本来の薬効の結びつきが解明され、ご理解いただける時代になることでしょう。